本日の「未出の過去問」です。
「未出の過去問」
未出の過去問とは、過去問出題後において、条文・判例等の変更により、過去問の正誤が変更されたにもかかわらず、その後、本試験で出題されていないものをいう。
(主に、過去問の買い替えをケチってるエコな方にオススメの記事である。)
今日は、答え合わせです(笑)
まずは、前回の宿題を確認しましょう。
【宿題①】(午前H24-16-1)
受働債権の弁済期が到来していない場合であっても,自働債権の弁済期が到来していれば,相殺をすることができる。
【宿題②】(午前S58-6-2)
甲タクシー会社の運転手乙が,乗客Aを乗せて走行中,丙運転の乗用車と衝突してAを負傷させたが,その事故は,もっぱら乙及び丙の過失に基づいて生じたものであった。乙がAに対して損害を賠償したときは,乙は,甲及び丙に対して求償権を行使することができる。
【宿題③】(午前S57-23-5)
相続人が自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内(家庭裁判所が期間を伸長したときはその期間内)に承認又は放棄をしないで死亡したときは,その者の相続人は,自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内(家庭裁判所が期間を伸長したときはその期間内)に相続の承認又は放棄をすることができる。
どうでしたか?できましたか?
まず、大前提として、僕が本試験で、この3つの設問に出会ったら、解かないと思います(笑)
なぜなら、正解がびみょ~に感じるからです。
例えば、宿題①は、僕は〇だと思っています。でも、TACの過去問集は×になっています。
別にどちらが間違えている、というわけではなく、どちらにも理由があります。
要するに、問題文の解釈によっては、〇にも、×にも、転びうる、と思っています。
このような問題に遭遇した時は、僕は、他の設問で解答を導きます。
僕は絶対に間違えたくないので、びみょ~な設問は、絶対に手を出しません。
これって、問題を解く際に非常に重要なことです。
本試験は、今まで、一生懸命勉強してきた結果を発揮する場所です。
その場所で、一生懸命頑張ってきたこと以外の要素である「たぶん」とか、「なんとなく」とかで勝負をしたくないです。
やったことを素直に本試験にぶつけたいです!
「たぶん」や「なんとなく」で解いてしまうと、努力してきた意味がなくなってしまうような気がして、自分の中で疑義が生じたら、絶対に回避するようにしています。
今回、「未出の過去問」シリーズとして、過去問の出題から、正誤が変わったものをご紹介しています。
今回の3問は、変わるか、変わらないか、びみょ~なメンバーだと思っています。
さて、では、順番に見てみましょうか。
【宿題①】(午前H24-16-1)
判例(最判平25.2.28)によると、「相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。」とされています。
「その弁済期が現実に到来していない」部分を問いたい問題と解釈すれば、×と判断することは可能です。
でも、出題者の意図として、そこまで問うていないのであれば、〇と判断できます。
つまり、択一は出題者の意図が分からないので、そのような問題は回避すべきです。
【宿題②】(午前S58-6-2)
被用者から使用者に対して、逆求償を認めた補足意見も付いているオオモノ判例が出ています。
今まで、逆求償ができない、とされていたので、過去問自体は、「×」で出題されています。
この判例が出たことによって、逆求償が認められるわけですが、判例は、常に認められるとしているわけではなく、「使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし」、「相当と認められる額について」、認められるとしています。
従って、この設問を常に逆求償が認められるような解釈をすれば、×と判断することは可能ですし、
一定の要件のもと、相当と認められる額については逆求償が認められると解釈すれば、〇と判断することも可能です。
ただし、この判例(最判平令2.2.28)が出た時点で、今年の本試験は問題が出来上がっていたと思われるので、この判例を根拠に問題を解くことはやめた方がいいと思います。
僕なら絶対に回避します。
【宿題③】(午前S57-23-5)
こちらも、再転相続(不動産登記法では数次相続と呼んでいるものです)の相続放棄について、最高裁判所が「その者の相続人が自己のために相続が開始したことを知った時」の起算点の解釈を初めて示したことで、有名な判例(最判平令元.8.9)です。
事案を確認します。
甥っ子さんが、伯父さんの相続人となっています。
つまり、甥っ子Aさんを基準に考えると、自分のお父さんBが死んでいます。そして、お父さんの兄弟の伯父さんCも死んでいるケースです。
相続の順番としては、伯父さんCが死んで、お父さんBが相続して、甥っ子Aが相続します。
この場合に、伯父さんCの借金があったことを甥っ子Aさんは知らなかったわけです。まぁ、普通は知らないでしょうね(笑)
つまり、伯父さんCが死んだ時点で、お父さんBが借金があるので相続放棄してくれたらよかったのですが、放棄も承認もしない間にお父さんBも死んでしまった場合に、伯父さんCの借金など知らない甥っ子Aが相続放棄できる起算点はどこからですか?ということです。
この点については、甥っ子Aが「自己のために相続の開始があったことを知った時」になりますが、この判例が示したのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈です。
甥っ子が伯父さんを再転相続するような場面では、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、「伯父さんの相続人としての地位を自分が承継した事実を知った時」という解釈を示しました。
「承継した事実を知った時」とは、債権者から請求されたような場面を思い浮かべれればいいと思います。
過去問の設問に戻ります。
この設問自体は、「その者の相続人は,自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内」と書いているので、解釈に踏み込まず、書いていることは間違えていないと判断すれば、〇にすることは可能です。
また、最高裁の示した「自己のために相続が開始したことを知った時」の解釈まで含んで、「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時」と判断すれば、×にもできます。
つまり、出題者の意図をどこまで考えるかです。
最高裁の示した、「自己のために相続が開始したことを知った時」の解釈まで考慮して解答を求めているか、によって、判断が分かれてしまうということです。
よって、僕の中では回避する設問になってしまいます。
ということで、びみょ~な設問は回避しましょう!(笑)
では、次回からは、民法の本編に突入したいと思います。
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最終更新日 : 2020-06-25