本日の「未出の過去問」です。
「未出の過去問」
未出の過去問とは、過去問出題後において、条文・判例等の変更により、過去問の正誤が変更されたにもかかわらず、その後、本試験で出題されていないものをいう。
(主に、過去問の買い替えをケチってるエコな方にオススメの記事である。)
今日の「未出の過去問」は、詐害行為取消権の続きです。
前回は、「詐害行為取消権の認容判決の効力が及ぶ者の範囲」を確認したので、
今回は、「詐害行為取消権の受益者・転得者の要件」を解いてみましょう。
余力がある方は、不動産登記の記述の対策で出たときのイメージを膨らませてみるのもアリです。
では、本日の「未出の過去問」です。
【未出の過去問】(H20-18-エ)
詐害行為の受益者が債権者を害すべき事実について善意であるときは,転得者が悪意であっても,債権者は,転得者に対して詐害行為取消権を行使することができない。
………(考え中)………
では、正誤です。
【正誤】〇 (424条の5柱書①)
受益者が善意なので、転得者が悪意でも、債権者は詐害行為取消請求できません。
「THE 未出の過去問」って感じの問題ですね(笑)
改正前は、判例が根拠となって「×」でした。

民法424条所定の詐害行為の目的たる権利の転得者から悪意で更に転得した者は、たとえその前者が善意であつても、同条に基づく債権者の追及を免れることができない。
この判例法理は変更されました。
要するに、受益者から転得した者が悪意だったら、たとえその前主たる受益者が善意でも、債権者は詐害行為取消権を行使することができるので「×」でした。
でも、債権法の改正で、詐害行為取消権の条文が整理されました。
今回の詐害行為取消権の条文の改正は、破産法とのバランスをとっています。
破産法の「否認権」と比較しながら、詐害行為取消権を整理すると、今までのルーズな詐害行為取消権の規定を、厳格な手続きである否認権に寄せただけなので、分かりがいいです。
ルーズな詐害行為取消権が、意外と否認権よりも厳しく生まれ変わった感じです。
条文を確認する必要はないですが、比較としてはこんな感じです。
破産法160条1項

民法424条



破産法160条2項

民法424条の4



破産法161条 

民法424条の2



破産法162条1項

民法424条の3



破産法の否認権の類型を、詐害行為取消権で同じように類型化して、ちょっと厳しくした、って感じです。
合格した後、今回の詐害行為取消権の改正が、破産法の否認権を意識した改正であることを確認してもらうと、楽しいかもしれません(笑)
(参考)破産法
問題に戻ります(笑)
今回の改正で、条文上、判例法理は変更されました。
では、条文を確認してみましょう。
【根拠条文・判例等】(424条の5)
(転得者に対する詐害行為取消請求)
第424条の5 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
この規定によって、
転得者への詐害行為取消請求が認められるためには、前提として、受益者への詐害行為取消請求ができる必要があることになりました。つまり、受益者が悪意じゃないと、そもそも、転得者には詐害行為取消請求できない、ってことです。
確認しておいて下さい。
では、最後に同趣旨の問題です。
こちらは、424条の5柱書②が根拠となるので、きれいに、1号と2号がそろって、いい感じで復習ができますね(笑)
【同趣旨の出題】
取引の安全の観点から,転得者が詐害の事実について善意である場合には,詐害行為の取消しは認められないとする立法趣旨に照らすと,転得者が詐害の事実について善意であれば,その転得者から更に対象物件を転得した者については,その者が詐害の事実について悪意であっても,債権者は,詐害行為取消権を行使することができない。(H11-7-ウ)
不動産登記法の記述にまで発展させたい方は、
詐害行為取消判決の登記は、抹消だけでなく、所有権の移転の登記が使えるという判例(最判昭40.9.17)を確認しておきましょう。
では、また次の「未出の過去問」でお会いしましょう!
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最終更新日 : 2020-07-25