本日の「未出の過去問」です。
「未出の過去問」
未出の過去問とは、過去問出題後において、条文・判例等の変更により、過去問の正誤が変更されたにもかかわらず、その後、本試験で出題されていないものをいう。
(主に、過去問の買い替えをケチってるエコな方にオススメの記事である。)
今日の「未出の過去問」です。
今回は、連帯債務の絶対効、相対効の問題です。
絶対効、相対効の効果は、大きく改正が入っているところなので、もう準備はバッチリだと思います。
連帯債務の出題は、連帯保証の内容との比較問題として、連帯保証を引っ張ってくることが多いので、出題の傾向については、こちらの記事を参照して、本試験の準備に備えて下さい。
また、特に連帯保証人の絶対効、相対効については、実務上も注意が必要です。
その注意点については、こちらのTACブログの記事をお読みいただけたらと思います。
では、さっそく、「未出の過去問」を確認してみましょう。
【未出の過去問】(H28-17-ア)
連帯債務者の一人に対して履行の請求をした場合には,他の連帯債務者に対しても,消滅時効の完成猶予の効力を生ずる。また,主たる債務者に対して履行の請求をした場合には,連帯保証人に対しても,消滅時効の完成猶予の効力を生ずる。
………(考え中)………
では、正誤です。
【正誤】×
連帯債務者の1人に対する請求は、他の連帯債務者に効力を生じないので、前半が「×」
後半の、主たる債務者に対する請求は、保証人に対して生じるので「〇」
さて、今回は、改正の影響を受けた部分を確認しておきましょう。
連帯債務について変更があった部分(改正によって相対効となったもの)
請 求
免 除
時 効
いずれも、絶対効から相対効に変更です。
また、相殺については、他の連帯債務者が反対債権を持っている場合、他の連帯債務者は、他人の債権で勝手に負担部分と言えども相殺することができず、抗弁権を有するだけになりました。
以上に対して、更改、相殺(ただし、他人の債権で相殺はできないことに注意)、混同は、絶対効です。
ついでに、連帯保証のケースも確認しておきましょう。
連帯保証について変更があった部分(改正によって相対効となったもの)
請 求
絶対効から相対効に変更です。
つまり、連帯保証人について生じた事由によって、主たる債務者に及ぶことはありません。
これに対して、更改、相殺(ただし、他人の債権で相殺はできないことに注意)、混同は、絶対効です。
もちろん、連帯債務も、連帯保証も、弁済(供託、代物弁済)のように債務を消滅させるようなものは、他の連帯債務者、主たる債務者に生じるのは当然なので絶対効です。そのあたりはテキストで確認しておきましょう。
また、反対に、主たる債務者に生じた事由は、主たる債務者がした時効の利益の放棄を除いて、連帯保証人に生じるので、連帯保証の場合には、「連帯保証人→主たる債務者」の話なのか、「主たる債務者→連帯保証人」の話なのか、しっかり区別しましょう。
では、最後に、同趣旨の出題です。
改正の影響に合わせて、3つに分類しています。それぞれの出題を確認してもらえたらと思います。
請 求 系
免 除 系
時 効 系
【同趣旨の出題 請 求 系】
A及びBがCに対して100万円の連帯債務を負担している場合に,CがAのみに対して100万円の債務全額の支払について裁判上の請求をしたときは,その請求は,Bとの関係では,消滅時効の完成猶予の効力を有しない。(H21-16-オ)
債権者が連帯債務者の一人に対して債務の履行を適法に裁判上請求した場合には,他の連帯債務者との関係でも消滅時効の完成猶予の効力を生ずる。(H19-19-ウ)
A,B及びCは,Dに対して連帯して金1,000万円の貸金債務を負っており,それぞれの負担部分が,A及びBは500万円,Cはゼロである場合に関して,DがCに対して債務の履行を請求しても,DのA及びBに対する債権の消滅時効の完成猶予の効力は生じない。(H4-4-イ)
【同趣旨の出題 免 除 系】
債権者Aに対してB,C及びDの3名が30万円を支払うことを内容とする連帯債務を負い,その負担部分がそれぞれ等しいという事例に関して,AがBに対して債務の免除をしたときは,Aは,Cに対し,20万円の限度で連帯債務の履行を請求することができる。(H25-16-ア)
B,C及びDは,Aに対し,600万円の連帯債務を負っている。AがDの債務全額を免除した。BのAに対する債務の額は400万円である。なお,連帯債務における債務者の負担部分は,平等の割合であるものとする。(H15-18-イ)
債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合には,他の債務者は,その債務者の負担部分について債務を免れるが,債権者が連帯保証人の1人に対して債務を免除した場合には,主たる債務者は,何ら債務を免れない。(H6-1-ウ)
A,B及びCは,Dに対して連帯して金1,000万円の貸金債務を負っており,それぞれの負担部分が,A及びBは500万円,Cはゼロである場合に関して,DがAに対して債務の全額を免除した場合でも,Cは,Dからの債務の全額の請求に応じなければならない。(H4-4-エ)
甲が乙に対し債務を免除した場合には,その免除は,乙の負担部分について,丙及び丁の利益のために効力を生ずる。なお,債権者を甲,連帯債務者を乙,丙,丁とする。(H元-14-オ)
【同趣旨の出題 時 効 系】
債権者Aに対してB,C及びDの3名が30万円を支払うことを内容とする連帯債務を負い,その負担部分がそれぞれ等しいという事例に関して,Bのために消滅時効が完成したときであっても,Aは,Cに対し,30万円全額について連帯債務の履行を請求することができる。(H25-16-オ)
連帯債務者であるA・Bの法律行為と,連帯保証でない保証における主たる債務者Cと保証人Dの法律関係との異同に関して,Aの債務の消滅時効が完成した場合にBが時効を援用すると,Bは,Aの負担部分についてのみ債務を免れることができるが,Cの債務の消滅時効が完成した場合にDが時効を援用すれば,Dは自らの債務を全部免れることができる。(H10-7-イ)
では、また次の「未出の過去問」でお会いしましょう!
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最終更新日 : 2020-09-08