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2020-10-23 (Fri) 10:45

過去問?捨て問?~過去問演習の意義を考える(午後R2-14)

先日、最終の択一試験のデータリサーチを頂きました。

今年の午後の択一試験のデータを見てみると、商業登記法の択一の正答率が低いことも目立つのですが、

個人的に、気になるのは、「午後 第14問」の問題。

不動産登記法の問題ですが、TACの最終のデータリサーチの結果だと、50.1%とのコト。

TACのデータなので、他の予備校のデータは分かりませんが、受験生の方の情報だと、もっと低いデータの結果もあるとか…。

この数字は、不動産登記法の問題の中では、「午後 第24問」43.7%に次ぐ、正答率の低さ。


第24問は、内容としては易しい問題だとは思いますが、形式面が穴埋め問題になっているので、

まだ記述の問題がひかえていることを考えると、本試験の現場では、「時間がかかりそうだ」で回避する判断をされた方もおられたのだろうと思います。

問題自体は後で見直してみると、単にア~オの肢について、単独申請か、共同申請か、いずれかを判断して、グループに分ければ瞬殺できる問題であることに気づくのですが、

現場では、このような時間がかかりそうな問題については、

「時間をかけて間違えるのではなく、時間をかけずに間違える!」のも、他の設問や記述にしっかりと時間かけて合格するための一つの作戦だと思います。

極端な話、5分考えて間違えるのであれば、1秒でテキトーにマークした方が、合格に近づくと思います。

その意味では、正答率の低さは納得。

でも、気になるのが、第14問の問題。

ちょっと問題文を確認してみましょう。


第14問 代位による登記に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。なお,ウの場合を除き,判決による登記については,考慮しないものとする。

ア Aが所有権の登記名義人である甲土地について,平成22年4月2日受付第1234号においてBを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた後,Aが死亡した場合において,抵当権の実行による競売の申立てが受理され,亡Aの債権者Bが代位によりAの法定相続人であるC及びDを登記名義人とする相続による所有権の移転の登記を申請するときは,「代位原因を証する情報は,平成22年4月2日受付第1234号をもって本物件に抵当権設定登記済みであることにより添付省略する」旨を申請情報の内容とすることにより,代位原因を証する情報の提供を省略することができる。

イ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,Bが贈与契約により所有権を取得したものの,その登記が未了の間にAが死亡した場合において,Bが,亡Aの法定相続人であるC及びDに対して,被相続人A相続人C及びDを債務者とし,当該贈与契約に基づく所有権の移転の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分命令を得たときは,Bは,当該処分禁止の仮処分の登記の前提として,C及びDに代位して相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請しなければならない。

ウ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,AからB,BからCへの所有権の移転の登記がされた後,Aが,B及びCを相手方として所有権の確認並びにB及びCに対する所有権の移転の登記の抹消を求める訴えを提起し,これらの請求を認容する判決が確定したときは,Aは、Bに代位してBからCへの所有権の移転の登記の抹消を申請し,次いでAからBへの所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。

エ 亡Aが所有権の登記名義人である甲土地について,亡Aの債権者Bが代位によりAの法定相続人であるC及びDを登記名義人とする相続による所有権の移転の登記を申請し,その登記がされた後に,C及びDの各持分につきEを債権者とする仮差押えの登記がされた場合において,Aが生前に甲土地をFに売却していたため,C及びDが錯誤を登記原因とする当該所有権の移転の登記の抹消を申請するときは,登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報として,Eの承諾を証する情報を提供すれば足りる。

オ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,Bに売却してその所有権をBが取得したにもかかわらず,Bがその所有権の移転の登記を申請しない場合において,Aが,Bに対して有する不法行為に基づく損害賠償債権を保全するために甲土地を目的物とする仮差押命令を得たときは,Aは,当該仮差押命令の決定書の正本を提供することにより,Bに代位して,単独で当該所有権の移転の登記の申請をすることができる。

1 アウ 2 アエ 3 イエ 4 イオ 5 ウオ



長いわっ!

おそらく、現場での皆さんの感想だと思います。

本試験の現場では、上で書いた「時間をかけて間違えるのではなく、時間をかけずに間違える!」という「1秒ルールを使うのも作戦かもしれません。

また、

「代位による登記」は準備してないわっ!

で、現場で回避された方もおられるかもしれません。

「代位による登記」に出題サイクルとしては、

H5→H12→H21→H24→H30

なので、僕自身も、出題されるとは思っていませんでした。

受験生の準備不足が正答率の低さに出たのかもしれません。ただし、これは正しい勉強法での準備不足だと思っています。

さらに、問題文の導入部分にある、

「判例の趣旨に照らし」って…!?

ここを見て、判例なんか覚えてないぞ…で回避された方もおられるかもしれません。

確かに、不動産登記法の中で出てくる判例は限られていると思います。

その意味では、「代位による登記」に判例なんかあったっけ?で回避するのも作戦かもしれません。

ちなみに、僕は全肢、先例が根拠に見えてしまっています(笑)


と、まぁ、ここまで、正答率が低くなった理由、回避の言い訳を考えてみたのですが、本題はここからです

一般論としては、正答率が低い問題は間違えていいと思いますが、

その理屈は、その内容が瑣末な論点である場合に限られると思っています。

特に今回のように、「問題文が長いから」という理由で、他の受験者と同じように一緒に間違えても構わない、としてしまうと、他の受験者の方に差をつけるチャンスを失うことになります。

「代位による登記」は、H30にも出題されていますが、

H30の問題文もかなり長いです。そもそも、代位による登記は、問題文が長くなるもの、という認識で解く必要があります。

また、近年の不動産登記法の択一の問題は、問題文が長い傾向があると思います。

「問題文が長いから後回し」という時代ではないわけです。

ということは、問題文が長い中で、どこに自分が知っている知識の設問があるかを瞬時に探し出す訓練が必要になります。

つまり、各設問の中のキーワード探し訓練です。

さらに、キーワード探しの訓練も必要なのですが、近年の不動産登記法の択一の問題は、

キーワードが見つかりにくい傾向もあると思います。

各設問の中にあるキーワードを探しながら、キーワードが見つからない場合には、キーワードにこだわらず、サッと他の設問に切り替える

という解法を意識しておく必要あると思います。

ちなみに、僕が最初にこの問題を解いたときは、こんな感じです。


①全体の設問をナナメ読みしてキーワードを探す

アは、「代位原因を証する情報の提供を省略」が見えるものの、他はキーワードが入ってきません(笑)

イの「処分禁止の仮処分命令」、オの「不法行為に基づく損害賠償債権、仮差押命令の決定書の正本」は目立つものの、難しい感じで、回避の判断

エあたりは、キーワードが見つけられない状態


(ここまでで、約10秒くらい)


②アの「代位原因を証する情報の提供を省略」に反応。ここを軸に決める

③アを×と判断。選択肢の組み合わせで、1と2を消去したあと、3、4、5の多数派イ、オの検討

④ 最初の①の段階で、イとオの設問を難しいと判断しているため、ウとエの判断に切り替える

ウとエの設問を見比べて、ウの設問の方が短いので、ウの検討へ


(ここまでで、約30秒くらい)


⑤4行目くらいで、「巻き戻し抹消」の論点であることに気づく(←遅っ!苦笑)

⑥ウを〇と判断すると、選択肢の組み合わせでは、5の組み合わせが正解肢


(ここまでで、約1分くらい)


と、まぁ、選択肢の組み合わせと、キーワード探しと、キーワードが見つからないので回避と、解法をフルに使いながら、短時間で正解番号にたどりついています。

要するに、僕にとって、この問題はこんな感じで見えていて、ここが光って見えれば、瞬殺になるわけです。


ア Aが所有権の登記名義人である甲土地について,平成22年4月2日受付第1234号においてBを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた後,Aが死亡した場合において,抵当権の実行による競売の申立てが受理され,亡Aの債権者Bが代位によりAの法定相続人であるC及びDを登記名義人とする相続による所有権の移転の登記を申請するときは,「代位原因を証する情報は,平成22年4月2日受付第1234号をもって本物件に抵当権設定登記済みであることにより添付省略する」旨を申請情報の内容とすることにより,代位原因を証する情報の提供を省略することができる。

イ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,Bが贈与契約により所有権を取得したものの,その登記が未了の間にAが死亡した場合において,Bが,亡Aの法定相続人であるC及びDに対して,被相続人A相続人C及びDを債務者とし,当該贈与契約に基づく所有権の移転の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分命令を得たときは,Bは,当該処分禁止の仮処分の登記の前提として,C及びDに代位して相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請しなければならない。

ウ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,AからB,BからCへの所有権の移転の登記がされた後,Aが,B及びCを相手方として所有権の確認並びにB及びCに対する所有権の移転の登記の抹消を求める訴えを提起し,これらの請求を認容する判決が確定したときは,Aは、Bに代位してBからCへの所有権の移転の登記の抹消を申請し,次いでAからBへの所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。

エ 亡Aが所有権の登記名義人である甲土地について,亡Aの債権者Bが代位によりAの法定相続人であるC及びDを登記名義人とする相続による所有権の移転の登記を申請し,その登記がされた後に,C及びDの各持分につきEを債権者とする仮差押えの登記がされた場合において,Aが生前に甲土地をFに売却していたため,C及びDが錯誤を登記原因とする当該所有権の移転の登記の抹消を申請するときは,登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報として,Eの承諾を証する情報を提供すれば足りる。

オ Aが所有権の登記名義人である甲土地について,Bに売却してその所有権をBが取得したにもかかわらず,Bがその所有権の移転の登記を申請しない場合において,Aが,Bに対して有する不法行為に基づく損害賠償債権を保全するために甲土地を目的物とする仮差押命令を得たときは,Aは,当該仮差押命令の決定書の正本を提供することにより,Bに代位して,単独で当該所有権の移転の登記の申請をすることができる。



何もこれは、僕が特別なわけではなく、過去問の知識ですから、誰でもできる話のはずです。

あとで、気づくのですが、この「第14問」の選択肢のすべて、過去問の肢だとか…。


過去問の演習は基本です。


そんなことは言われなくても、皆さん、十分にご存知のはずです。

頑張って過去問の演習をしているのは、本試験の現場で、同じ過去問が出題されたときに、

しっかりと判断できるようにして、正解するためだと思います。

せっかく試験委員さんが、まるまる1問、過去問で固めてくれたサービス問題を、

正答率を50%まで落としてしまうのはもったいないような気がします。

過去問を頑張って解いているのに、ア~オをすべて過去問で出題されても間違えてしまう

これはオオゴトだと思います。

過去問を捨て問にしたらダメでしょ~。


過去問をやって、現場で過去問を間違えてしまった…

何が足りないのか、分析するにはいい問題だと思っています。

特に、近年の不動産登記法の択一の問題文の長文化を考えると、しっかりと解法を身に着けておかないと、

自分が頑張ったことが、本試験の現場で反映できない、という

さみしい結果になっちゃうので、ぜひ、自己分析して下さいね。


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最終更新日 : 2020-10-23