「令和3年度本試験 カウントダウン!ごった煮記事」です。
令和2年度のオススメ記事
今回は、前回のご紹介した民法の過去問H18-10から、頭の体操(笑)
前回、H18-10の問題文の「なお書き」について、前段のお話を書きました。
今回は、後段のお話。
もしも、後段部分がなかったら…で、頭の体操をしてみましょう。
使う素材は、H18-10-エです。
【H18-10-エ】
Aは、B名義で登記されているB所有の甲土地につき、平成元年4月1日、所有の意思をもって、善意で、過失なく、平穏に、かつ、公然と占有を開始し、その後も、その占有を継続している。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らしCの請求が認められないものの組合せは、後記1から5までのうちどれか(なお、Aの占有は、次のアからオまでの請求の時まで継続しているものとし、Cは、Aの占有につき善意であったものとする。また、Aにつき甲土地の取得時効が成立する場合には、Aは、取得時効を援用したものとする。)
エ 平成11年11月1日にBから甲土地を買い受けて同日所有権の移転の登記をしたCは、平成21年5月1日、Aに対し、所有権に基づき甲土地の明渡しを請求した。
そして、この問題と比較したいのが、なお書きの後段をなくしたバージョン。
【H18-10-エ改】なお書き後段がない場合
Aは、B名義で登記されているB所有の甲土地につき、平成元年4月1日、所有の意思をもって、善意で、過失なく、平穏に、かつ、公然と占有を開始し、その後も、その占有を継続している。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らしCの請求が認められないものの組合せは、後記1から5までのうちどれか(なお、Aの占有は、次のアからオまでの請求の時まで継続しているものとし、Cは、Aの占有につき善意であったものとする。また、Aにつき甲土地の取得時効が成立する場合には、Aは、取得時効を援用したものとする。)
エ 平成11年11月1日にBから甲土地を買い受けて同日所有権の移転の登記をしたCは、平成21年5月1日、Aに対し、所有権に基づき甲土地の明渡しを請求した。
さて、比較しながら考えてみましょう。
…………(考え中)…………
では、答え合わせです。
【H18-10-エ】
正誤 Cの明渡請求は認められる
【H18-10-エ改】なお書き後段がない場合
正誤 Cの明渡請求は認められない
なお書き後段がなくなることで、正誤が反対になります。
つまり、Aは取得時効を主張する場合、10年の短期を主張してもいいし、20年の長期を主張することも構いません。
でも、なお書き後段があることで、20年の長期の場合でも、必ず短期の時効取得を強制的に援用させられちゃいます。
図に書くと、こんな感じです。

この場合、Aは善意無過失なので、平成元年4月1日の10年後の平成11年4月1日に、
なお書き後段の指示によって、強制的に時効取得を援用させられてしまいます。
その結果、Cは、時効完成後の第三者となって、先に登記をされた以上、Aは負けちゃいます。
Aのリベンジとしては、Cが登記をしてから10年で再度の時効取得が主張できることになりますが、
その再度の時効取得が完成するのが、平成21年11月1日。
平成21年11月1日までくると、AはCに勝てる可能性が出てくるのですが、
残念ながら、Cが勝負をしてきたのが、平成21年5月1日で、再度の時効取得の完成まで届かず。
よって、Cからの明渡請求が認めれることになります。
では、なお書き後段がなければ、どのようになるでしょう?
図を書くとこんな感じです。
Aは、平成11年4月1日に強制的に時効取得の援用をさせられることがないので、
長期の20年の時効取得の援用が可能です。
つまり、平成21年4月1日に、時効取得の援用をすればいいわけです。
こうなると、Cは、時効完成前の第三者となります。
時効完成前の第三者に対しては、登記なくして、Aは勝つことになります。
よって、Cの明渡請求は認められません。
このように、時効取得の援用では、スタートとなる起算点はずらせないものの、
ゴールはずらせることに注意しましょう。
そして、そのゴールをずらせないようにしたのが、「なお書き後段」の正体だった、ということですね。
令和3年度本試験まで
残り 13日
●TACのホームページでもブログを書いています。
受験と実務をつなげるブログです。ぜひ。
●受講生時代のブログも残っています。
スポンサーサイト
最終更新日 : 2021-06-21