こんにちは。
番外編が続きます。民法の推論問題対策を書いたので、民法の推論問題を使いながら、今後の対策をもう一つ考えてみましょう。
きっと勉強になるはずです(笑)
まずは、H18-12の推論問題を解いてみて下さい。
【H18-12】
共有物の分割によって公道に通じない土地を生じた場合には,その土地(以下「袋地」という)の所有者は,民法第213条第1項に基づき,袋地を囲んでいる他の土地のうち他の分割者の所有地(以下「残余地」という)のみを通行することができる。次の第1説及び第2説は,袋地について同項に基づく通行権が発生した後に残余地について特定承継が生じた場合における当該通行権の消長について述べたものであるが,次のアからオまでの記述のうち,第2説の立場から主張されるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
第1説 民法第213条第1項に基づく通行権は,残余地について特定承継が生じた場合であっても消滅せず,袋地の所有者は,同法第210条第1項に基づく通行権を有しない。
第2説 民法第213条第1項に基づく通行権は,残余地について特定承継が生じた場合には消滅し,袋地の所有者は,同法第210条第1項に基づく通行権を有することとなる。
ア 無償の利用関係の受忍という負担が永久に付いてまわるというのは,近代的な土地所有権の在り方として正当ではない。
イ 袋地を囲んでいる他の土地のうち残余地以外の土地の所有者に不測の不利益が及ぶことになるのは不合理である。
ウ 民法第213条第1項は,相隣関係に関する規定の一つとして,残余地自体に課せられた物権的負担について定めたものであり,対人的な関係を定めたものではない。
エ 通行権の負担があることは,必ずしも外形的に明らかな事情ではない。
オ 袋時の所有者が自己の関与しない偶然の事情によってその法的利益を奪われるのは不合理である。
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「公道に至るための他の土地の通行権」の推論問題です。
公道に至るための他の土地の通行権の問題は、択一としては、所有権の登記がイラナイ、という知識が圧倒的な軸となります。
登記がイラナイって、めずらしいですよね。法定地上権と、ココの2つを押さえておけばいいと思います。
さて、この問題の解説等は、お持ちの過去問集で確認してもらうとして、第2の立場から主張されているのは、アとエになります。
さて、本題はここからです。この推論問題は、最判平2.11.20がネタ元です。
ちょっと、判旨を確認してみましょう。
最判平2.11.20の判旨
共有物の分割又は土地の一部譲渡によって公路に通じない土地(以下「袋地」という。)を生じた場合には,袋地の所有者は,民法213条に基づき,これを囲繞する土地のうち,他の分割者の所有地又は土地の一部の譲渡人もしくは譲受人の所有地(以下,これらの囲繞地を「残余地」という。)についてのみ通行権を有するが,同条の規定する囲繞地通行権は,残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではなく,袋地所有者は,民法210条に基づき残余地以外の囲繞地を通行しうるものではないと解するのが相当である。けだし,民法209条以下の相隣関係に関する規定は,土地の利用の調整を目的とするものであって,対人的な関係を定めたものではなく,同法213条の規定する囲繞地通行権も,袋地に付着した物権的権利で,残余地自体に課せられた物権的負担と解すべきものであるからである。残余地の所有者がこれを第三者に譲渡することによって囲繞地通行権が消滅すると解するのは,袋地所有者が自己の関知しない偶然の事情によってその法的保護を奪われるという不合理な結果をもたらし,他方,残余地以外の囲繞地を通行しうるものと解するのは,その所有者に不測の不利益が及ぶことになって,妥当でない。
どうですか?同じキーワードが入っていることに気づかれたでしょうか?
この問題は、判旨のコピペで作られています(笑)
言い方は悪いですが、推論問題を作る側の手抜きです。
このように、判旨がそのまま切り抜いて使われることもある、ということです。
じゃあ~、これから全部、判旨を読めってことかよ?
いやいや、それは時間がムダでしょう(笑)
全部を読む必要はないです。でも推論問題で使われそうな判旨は読んでもいいと思います。
推論問題で使われそうな判旨ってどれよ?
それが分かれば苦労はしないですよね(笑)
一つの参考として、この平成2年の判例は、反対意見が付されています。
つまり、最高裁の判例で、反対意見が付けられてる判例は、推論問題で使えるかの検討をしてもいい、ということになります。
反対意見が付されている判例や、最高裁でひっくり返った判例は試験では特に重要です。
さて、今日のテーマはこの先にあります。
この推論問題は、H18-12に出題された後、もう推論問題で使われていません。
では、出題を見てみると、その後、H21-11-イ→H26-9-ウと、判例の結論を問う、知識問題の出題になっています。
これも司法書士試験の一つの特徴です。
推論問題で問われた知識が、次は、知識問題で結論が聞かれていくパターンです。
例えば、「俺が出世したらお金を返すわ!」って判例(大判大4.3.24)も、
H14-3の推論問題からの、H21-4-ア→H24-5-アのパターンです。
実はこのパターンは意外とあります。
民法の推論問題の対策をした後は、次は知識問題で出るんじゃないか?って準備をしておきましょう。
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最終更新日 : 2020-05-29