今日は、番外編で、相続が発生した場合の銀行預金の引き出しのお話です。
どちらかというと、受験知識と実務をつなげる内容なので、TACブログ向きの記事になりますが、
令和2年度の出題予想の番外編なので、こちらで記事を書きます。
相続が発生した場合、よく聞かれるのが、預金の話。
銀行に死んだことを伝えちゃうと、預金は凍結されて、遺産分割があるまで引き出せなくなります。
受験生としては、必ず準備している判例が変更された、未出の判例(最判平28.12.19,最判平29.4.6)になります。
でも、相続人としては、葬儀費用であったり、病院や施設への支払いがあって、どうしても預金を引き出したい事情が出てきます。
良いか悪いかは別にして、キャッシュカードの暗証番号が分かれば、ATMで引き出すことも可能ですが、最近では、家族間でも暗証番号を知らないケースが増えているなぁ~って感じ。
で、結局、銀行に届けて、凍結されて、引き出せない(笑)
遺産分割をして、預金を引き出す場合、銀行へ持ってい行く主な書類は、こんな感じです。
①亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、原戸籍、除籍等
②相続人の戸籍
③遺産分割協議書
④相続人全員の印鑑証明書
もちろん遺言書があれば、遺産分割協議書は必要がありませんが、まだまだ、遺言書って少ないです。
③については、法定相続で預金を分け合う場合でも、銀行所定の用紙に相続人が全員実印を押すので、結局、遺産分割協議書か、銀行の相続届に相続人全員が実印を押して、印鑑証明書をつける必要があります。
何が言いたいかというと、
時間がかかる
ということです。
だって、葬儀費用とかで、急な出費がいるわけで、急いでお金を引き出したいのに、
相続人全員に実印を求めて、印鑑証明書を用意してもらっていたら、1週間から2週間くらいかかちゃいます。
そこで、相続法の改正で登場したのが、909条2の預貯金債権の仮払いの条文。
内容としては、家庭裁判所の判断を経なくても、お金を引き出せます。
ちょっと条文を確認します。
民法909条の2前段
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。
ざっくり書くと、
預貯金債権 × 1/3 × 相続分
って感じ。
例えば、ある銀行に普通預金と、定期預金があって、相続人が子2人の場合、
それぞれ、
普通預金 × 1/3 × 1/2
定期預金 × 1/3 × 1/2
で計算します。
債権ごとに考えるので、普通預金、定期預金ごとに考えます。
この場合、銀行ごとでMAX引き出せるのが、「法務省令で定める額」ですが、こちらが、平成30年法務省令第29号の内容。ちょっと確認します。
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。
なるほど、銀行ごとのMAXは150万円です。
この150万円って、約1年分の生計費や、平均的な葬儀費用から出した金額のようですが、
僕の中では意外と少ないな~と思っています。
この前も葬儀費用を引き出したのですが、150万円では足りませんでした。
僕の中では、意外と役に立たないのがこの仮払いの制度(笑)
金額が少ないのもあるのですが、銀行に持って行く書類を確認すると、
①亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、原戸籍、除籍等
②相続人の戸籍
③預金を引き出す相続人の印鑑証明書
遺産分割協議書がなくなって、相続人全員の印鑑証明書も求められないので、遺産分割協議書を作るよりも早く対応できるような気もしますが、戸籍を全部集めるのに、遠方だと郵送等で1週間くらいかかることも多いです。
そうなると、その1週間の間に、遺産分割協議書を作成することも可能になるわけで、結局、どうせ引き出すなら、全部引き出したらいいような気がします。
仮払いしてから、また残りの手続きをするのが2度手間です(笑)
仮払いでその場で払ってくれたらいいのですが、すぐに払ってくれるわけでもなく、
書類の内容確認で一定の時間がかかります。
結局、
時間がかかる
ホント、役に立たない制度です。
この仮払いの制度が登場する前から、実務上は、便宜払いの制度が利用されています。
この制度は、葬儀費用とか必要な範囲で、とりあえず、払ってくれます。
実務上の運用なので、例えば、支店決済などで、払ってもらえないこともあるのでしょうが、僕は断れたことは一度もないです。
常識的な範囲であれば、金額の制限も特にないと思います。
必要な書類といえば、こんな感じです。
①亡くなった人と、預金を引き出す相続人の関係が分かる戸籍等
②預金を引き出す相続人の印鑑証明書
一気に戸籍を集める手間が省けます。
①の関係が分かる戸籍というのは、だいたい、亡くなった方の婚姻後の戸籍をとれば足ります。
なので、1~3日もあれば十分です。
振込みも、その場で葬儀業者等へ、直接、振り込んでくれるので、10分くらいで終わります。
時間がかからない
僕の中では、こちらの方が使い勝手がいいので、仮払いの制度を利用することはないような気がします(笑)
参考までに、例えば、UFJ銀行だと、このような書類を提出します。
ただし、支店決済だと、支店ごとに対応が違うのでご注意下さい。

司法書士試験の対策としては、MAX150万円の内容も覚えておいて下さい。
また、計算の仕方が、個々の債権ごとであることも確認しておいて下さいね。


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最終更新日 : 2020-06-17